蟹工船と義家弘介
8月24日の中日新聞の記事での蟹工船ブームに関する義家弘介氏のコメントを読んで、蟹工船の一部を思い出した。
蟹工船に中積船という物資を積んだ船がやってくるのだが、その船で慰問のための映画と弁士もやってくる。
西洋映画と日本映画を見せるのだが、その日本映画に関するくだり
日本の方は、貧乏な一人の少年が「納豆売り」「夕刊売り」などから「靴磨き」をやり、工場に入り、模範職工になり、取り立てられて、一大富豪になる映画だった。――弁士は字幕(タイトル)にはなかったが、「げに勤勉こそ成功の母ならずして、何んぞや!」と云った。
それには雑夫達の「真剣な」拍手が起った。然し漁夫か船員のうちで、
「嘘(うそ)こけ! そんだったら、俺なんて社長になってねかならないべよ」
と大声を出したものがいた。
それで皆は大笑いに笑ってしまった。
後で弁士が、「ああいう処へは、ウンと力を入れて、繰りかえし、繰りかえし云って貰いたいって、会社から命令されて来たんだ」と云った。
義家氏は言う。
「必死に頑張って、底辺から這い上がろうとしている人間もたくさんいる」
「抜本的に改革すべきは環境よりも本人の意思」
小林多喜二が80年も前に批判した言説を義家氏は再現してみせる。
おそらく義家氏は蟹工船を読んでいないのだろう。