競争というのは弱いものが負けるようにできている



橋下知事が学力テストの市町村別平均点の公表を強行したことにより、大阪府では学力テストの平均点が高い市町村は、平均所得が高く、ホワイトカラー層が多い傾向にあることが証明されました。

テストを受けた子どもの親の収入や職業分類ではなく、市町村という広い地域でこれだけ強い相関が出ているんですから、子どもの成績は学校以外の社会的要素に強く影響をうけることは明らかです。

橋下知事は府知事選で、学力テストの平均点が低く、平均所得の低い地域から、より高い得票率を得ていたのですから、教育政策においても学力テストの平均点が低く収入の少ない人たちにとって有利な教育政策を行うことは当然でしょう。 しかし、橋下知事が行ったのは学力テストの市町村別平均点を公開し、競争を煽るというものでした。


ここには二重の間違いがあります。 

ひとつ目は、学力テストの成績が低いことを学校や教員のやる気や質の問題にしたこと。 テストの点と地域の所得やホワイトカラー層割合が強く相関することから、学力テストの点数は学校以外の要素があると考えるべきです。 また個々の学校(教員のやる気や質)が学力テスト成績にどれぐらい影響しているのかというデータは一切示されていません。主観的な思い込みのレベルです。 

ふたつ目は、競争をさせるという方法。 豊かな地域で学力テストの成績が良く、貧しい地域で学力テストの成績が悪い。 競争になればどちらが勝つのかは明らかです。 橋下知事は彼が府知事選でより多くの票を獲得した地域にとって不利益な方法をとったのです。 


「橋下氏の強い地域、学力低い」と判明のコメント欄にこのような意見がありました。
貧乏で公立校にしか子供を行かせられない人たちが、公教育の充実を主張する橋下氏を支持してるだけじゃないの?カネがあってすでに子供を私塾や私立校に通わせている層にしてみれば、公教育などどうでもいいわけで。なにが「とんでもないこと」なのかわからない。


残念ながら橋下知事は「貧乏で公立校にしか子供を行かせられない人たち」にとって有利な教育政策を打ち出していません。 彼がとくに貧困層に手厚い教育費を出す(もしくは貧困層の多い地域に特に予算を増額する)ような政策を出したとは私の知る限りありません。 この方のおっしゃる「公教育の充実」が競争を煽ることなら、もう競争の結果は見えているじゃありませんか。 自由な競争は現時点で強い人たちに有利に働きます。




データ
学力テスト平均点
市町村別平均正解率は2008年10月17日読売新聞の記事より4科目の平均正解率
http://osaka.yomiuri.co.jp/edu_news/20081017kk02.htm


平均所得
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001013124&cycode=0
統計でみる市区町村のすがた2008 C経済基盤 2006年のデータ
課税対象所得÷納税義務者数


ホワイトカラー率
平成17年(2005年)国勢調査 第3次集計 第2表、第3表
(A専門的・技術的職業従事者+B管理的職業従事者+C事務従事者+Dサービス職業従事者)÷総従業者数



橋下氏得票率
http://www.pref.osaka.jp/senkan/date/h20tiji/tiji_Top_Main.htm
大阪府知事選挙 市区町村別開票状況の得票数を「合計」で割ったものを得票率とする。